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若手家庭医のための家庭医療学冬期セミナー

第3回 若手家庭医のための家庭医療学冬期セミナー

 2008年2月9、10日、大阪のトーコーシテイホテル梅田にて『第3回若手家庭医のための家庭医療学冬期セミナー』が開催されました。若手家庭医部会が主体となってからは3回目のセミナーで、総勢約100名の参加者、講師が集まりました。その内容を紹介します。

[ 第3回冬期セミナー開催要項 ]

1日目
○開会講演「家庭医との出会い、家庭医となるための出会い」
開会講演「家庭医との出会い、家庭医となるための出会い」 揖斐での10年で学んだ事を101歳のKさんとの関わりをもとに吉村先生ご自身のライフサイクルやバイオリズムを絡めてご講演いただきました。ツツガムシ病を診断したときの経験を、実は初めにツツガムシに気づいたのは看護師さんであった、発熱で倒れているのを発見したのは郵便局員だった、Kさんからは入院せずに済んでよかったと感謝され医師患者関係が深まったと紹介されました。医学的診断はもちろんのこと、独居をささえる地域のネットワーク、医師患者関係について考えさせられた機会であったそうです。Kさんが帯状疱疹後神経痛に悩んでいたとき、医学生と研修医に帯状疱疹後疼痛の持続期間について調べてもらい、実際にKさんへ伝えてもらった。実際の患者さんの問題解決のために学習することで学習者の理解が深まると説明されました。学生や研修医と出会い、成長を見ることはおもしろく、自分にとってガソリンのようなものだと私たちにも勧めてくださいました。また、診療所の診療や教育の評価、地域の疾患を調査する研究も必要なこと、家庭医療でのケアの継続性や関係性は海外でも研究中のトピックであると紹介いただきました。その他、卒業後のアイデンテイテイ危機、診療所への赴任、家族の状況、人との関わりなども紹介され、大変なこともあるが地域医療はおもしろいと終始楽しそうな表情で私たちに語りかけてくださいました。
○ワークショップ1 「家庭医療の理論的基盤としての生物心理社会モデル」
ワークショップ1 「家庭医療の理論的基盤としての生物心理社会モデル」 WS1では「家庭医療における診療教育モデルを学ぶ」と題して、「生物心理社会(BPS)モデル」をテーマに扱いました。家庭医らしい外来診療とそれに組み込まれる教育についての概説では、BPSアプローチとしてロチェスター大学で提唱されている6つの構成要素、1.患者の物語と生活環境を踏まえること、2.生物心理社会領域を統合すること、3.関係性について着目すること、4.医師自身を知ること、5.臨床モデルをどのように適応するか、6.多軸のアプローチを用いることが紹介されました。その後は各グループに別れ、レジデンシーの提示する比較的複雑なケースについてBPSアプローチを用いてディスカッションし、全体での共有を行いました。終わりに、その日の学びを具体化するためにそれぞれの行動計画を立てました。幅広い守備範囲を有する家庭医の実践と教育のあり方をあらためて考えなおす、大変充実したWSになりました。(朝倉 健太郎)
○ワークショップ2 「家族志向のケア」

ワークショップ2 「家族志向のケア」 日常診療の中でどのように家族志向のケアを行うかについて、ロールプレイを行いながら学習するワークショップでした。SPさんと佐古先生とのロールプレイで始まり、私たちの心は一気に「難波さん一家」へと引き込まれていきました。ロールプレイのシナリオでは、鼻水を主訴に3人の兄弟が別々に受診し、蓄膿症になるのではないかと抗菌薬の処方を執拗にせまる母親に注目が集まりました。医師役、母親役、子供役に分かれ、ロールプレイを計3回行いました。それぞれのシナリオがつながっており、継続的に家族と関わる流れのなかでの診療場面の設定でした。その母親の心理状況を理解しようとする中で、少しずつ家族の背景や家族の構造、ライフサイクルやストレスや感情的な結びつきが明らかになりました。家族図を少しずつ、追加、修正し、学習者の家族評価もしだいに深い域に達していました。学習者のロールプレイにも熱が入り、楽しく学べて、臨場感溢れるワークショップとなりました。(飛松 正樹)
○ワークショップ3 「医師は患者さんをどこまで理解できるか? 予防と行動変容にむけての関西風ワークショップ」

ワークショップ3 「医師は患者さんをどこまで理解できるか? 予防と行動変容にむけての関西風ワークショップ」 その1 「何が関西風なんやろ?」と、同じ関西人としては興味津々で臨んだWS。まさかあの「探○ナイトスクープ」風に進行するとは思っていませんでした。
 北村先生演じる桂小枝レポーターが、産業医の竹中先生の困っている患者さんの依頼シーンから始まりました。高松先生ふんするまりちゃんが、桜井先生演じるDMのコントロール不良の桜井さんに突撃取材、それが掛け合い漫才のように面白いのです。そして、桜井さんの不安を聞いて、それをもとに参加者同士でロールプレイするというWSの構成としても楽しめるものでした。
ワークショップ3 「医師は患者さんをどこまで理解できるか? 予防と行動変容にむけての関西風ワークショップ」 その2 全体を通して、自己管理が重要であること、そのためにソリューションフォーカスアプローチがひとつの外来の面接技法であることを学び、大変勉強になるWSでした。
 家庭医の現場での悩みは多く、探偵さんにお願いしたい依頼は確かに沢山あるのでしょう。いつかこんな番組が本当に出来たりして・・・と思いました。そのときは僕ら若手家庭医が探偵になります!!(松井 善典)
○懇親会
 午後の日程終了後、参加者、講師が集まって懇親会が行われました。久しぶりにあった友人と会話と楽しむ方、話してみたかった先生を見つけて質問をぶつける方など、皆さん楽しく会食されていました。
懇親会
2日目
○ワークショップ4 「これで安心! 親と子のケア」
 川崎市立多摩病院総合診療科の大橋博樹先生、櫛笥永晴先生とともに、同院小児科の鶴岡純一郎先生も講師として参加いただき、ワークショップが行われました。
  はじめに、川崎市立多摩病院での総合診療科・小児科の協力関係が紹介され、鶴岡先生から小児科医が家庭医に期待することとして「両親・家族を含めたトータルケア」「15歳以降の継続診療」「予防接種・健診」「小児科不在地域での養育医療」が挙げられました。
ワークショップ4 「これで安心! 親と子のケア」  引き続き、熱性けいれんのケースと気管支喘息のケースで、まず診断基準を理解し、新たな知見も含めた治療方針が紹介され、「母親にどう説明をするか」という点に重点をおいたロールプレイを行いました。説明するポイントなどが分かりやすく、普段小児診療をしていない参加者でも疑似体験を通して学ぶことができたと思います。
家庭医と小児科医が協力することで、社会に貢献しお互いにwin-winの関係を構築できる、と考えてくれる小児科医がいることに大変勇気付けられました。自分としても家庭医の能力や得意分野を小児科医にアピールし、よい協力関係を作っていきたいと思いました。(菅家 智史)
○ワークショップ5 「楽々介護入門 〜家庭医なら知っておきたい移乗介助のコツ〜」
ワークショップ5  「楽々介護入門 〜家庭医なら知っておきたい移乗介助のコツ〜」 このワークショップでは、移乗動作(トランスファー)を通して適切な動作介助のコツを体感することができました。学習者同士が介助者と被介助者とペアになり、ワークショップのほとんどが移乗介助の実技に費やされました。初めに、臥床している人の起き上がりの介助、次にベッドから車椅子への移乗介助を行いました。1回目終了後は、介助者からは「重かった」、被介助者からは「怖かった」という言葉が出ていましたが、コツを覚え回数を重ねるにつれ「あれ!え?楽々!」そんな言葉が各所で聞かれるようになったのが印象的でした。被介助者との距離や手の位置、足の位置、体の姿勢、力の入れる向きなどに注意しなければできませんでした。しかし、それは「被介助者を運ぶ」というイメージから起き上がりや移乗の正常動作に近づけることで楽々介助ができるということでした。(飛松 正樹)
○ワークショップ6 「家庭での終末期医療 〜地域での満足死を目指して〜」
 「在宅での終末期ケア」で、舩木先生をはじめとする三つ葉在宅クリニックの若手Drが担当でした。実際に舩木先生が関わった方の取り組みをビデオで供覧し、参加者で在宅におけるケアカンファレンスをロールプレイすることで、意思決定の枠組みを一緒に勉強しました。
「一人称の意思」である患者本人の思いを、周囲の人間が想いをめぐらすことが大切だという感想を持ちました。在宅に限らないことかもしれませんが、医療の意思決定の際には、医学的な問題だけではなく、患者や家族の想い、介護環境などの周囲の状況について考慮を入れて決めていくこと、患者本人が意思を表明できない時にケアカンファレンスで衆知を集めることの大切さを学びました。(森永 太輔)
○ワークショップ7 「EBM 〜エビの料理教室 予防医療エビ風味〜」
 参加者は15−6人で全員の顔がみえ、非常に話しやすい雰囲気でした。進行もだじゃれを交えながら楽しく進み、小さめの会場ならではの濃縮した時間が味わえました。内容は、EBMの5ステップ(問題の定式化・情報収集・批判的吟味・患者への適応・振り返り)を一連のコース料理に見立て、実際の材料(症例)をもとにみなでコース料理を作っていく(EBMの手順を完成させていく)というもの。参加者の感想からは、「EBMで確率はでるので患者への説明はしやすいが、最終的にこうしなさいという答えはでないので、医師も患者もまた悩む」「EBMで勧められる医療が、上級医の意見と違うと困る」など、現実へ適応させる段階での悩みが出ており、参加者の関心の高いステップなのだと感じました。今後、こういった悩みに対応する「エビの料理教室上級編」や「エビ調理師の悩みを語る会」などがあればと感じました。(江口 幸士郎)
○ワークショップ8 「タイムマネジメント」
 家庭医に限らずどんな職業においてもタイムマネジメントは必要となってくる、上手いマネジメント法はないものかと思いこのワークショップに参加しました。
 まずはグループワークにて各々が抱えている仕事について挙げて確認。その後、カナル現象やアイゼンハワーの法則について説明を受け、普段の仕事がついついカナル現象に従って行われていることに気づきました。その後、先に挙げた自分の仕事について、アイゼンハワーの法則に従って重要度と緊急度で分けられた四分割表に入れていきました。いかに「緊急性はないが重要なこと」を「緊急で重要なこと」に変わる前にこなしておかなければならないか、ということを実感し今後もこの法則に従って自分自身の仕事のマネージメントを行おうと決心しました。
 またスケジュール管理ツールとしてGoogleカレンダーなどのWeb管理ツールを紹介していただいたりし、これらも試しに用いてみることにしようと思いました。
 タイムマネジメントはすぐにできるものではなく、日々のツールを使い続けてそこでの経験・反省を繰り返しながらそれらを積み重ねて慣れて行くもので、明日からでもまずは教えられた通りにやってみよう、と思いました。(渡邉 力也)
○閉会講演 「明日への関係性を紡ぐ〜家庭医の日常より」
閉会講演 「明日への関係性を紡ぐ〜家庭医の日常より」 閉会講演として、北足立診療所の井上先生からお話をしていただきました。
 「人生は出会いで決まる」この言葉が印象的でした。
 救急外来との相違という点では、「飛んできた玉を打ち返す」という形ではなく、飛んできた玉はいったん受け止めるということ、そしてさらに「いもづる式=家族ぐるみ」の診療スタイルについてお話がありました。
 家庭医には「継続性」がよく問われますが、「続いているのは関係性」ということを示す様々なエピソードを聞かせていただきました。
 また、関係性とは2者のものだけではなく、「網目のように」広がる関係性についてお話頂き、それが生み出す効果についてもまとめて頂き、これから、若手の家庭医が診療をしていく上で、一歩先に立つ先輩の話が聞けるよい機会となりました。(矢部 千鶴)

文責:日本家庭医療学会 若手家庭医部会Web担当

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