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若手家庭医のための家庭医療学冬期セミナー

第2回 若手家庭医のための家庭医療学冬期セミナー

 2007年2月10、11日、大阪のトーコーシテイホテル梅田にて『第2回若手家庭医のための家庭医療学冬期セミナー』が開催されました。若手家庭医部会主催では2回目のセミナーで、総勢100名の参加者、講師が集まりました。その模様を紹介します。

[ 第2回冬期セミナー開催要項 ]

1日目
○開会前

受付風景 昨年は東京で行われたこのセミナー。今年は大阪での開催となり、参加者枠は100名と倍増しました。手作りのセミナーであり、受付は若手家庭医部会の生涯学習プロジェクトの皆さん。もちろん参加者と同じ若手家庭医であり、参加者でもあります。順調に受付は終了し、開会時には会場のほとんどの椅子がうまっていました。
○開会講演1「家庭医との出会い、家庭医となるための出会い」
開会講演1「家庭医との出会い、家庭医となるための出会い」 奈良市立月ヶ瀬診療所の藤原靖士先生に、家庭医療の研修コースがなかった時期にどうやって家庭医になろうとしたか、先生の経験に基づいてユーモアを交えてご講演いただきました。
 はじめは田舎の診療所で働きたいという想いで、地域の勉強会や大学の総合診療部での研修、家庭医のための生涯学習セミナー、メーリングリストなどを通じて診療所で役に立ちそうなことを学び、その中で家庭医や家庭医を目指す先生方との出会いがあった。診療所で目の前の患者さんのために役に立つことを追い求めてきたら、気がついたら周りには家庭医というものがあった。診療所で実際に診療するようになってから、家庭医でいわれていることは診療所で役に立つことを実感しているということでした。
 講演の最後に、「自己流でやってきた私よりも失敗が少なく、寄り道が少なく、よい家庭医になってほしい。お互いに交流してよりよいものを作ってほしい。ただし、家庭医だからこうしなくちゃいけないではなく、目の前の患者さんや地域のために何ができるかという姿勢を大切に。」と若手家庭医への熱いメッセージをいただきました。
○開会講演2「家庭医が親になるということ」
開会講演2「家庭医が親になるということ」 開会講演2コマ目は題して「家庭医が親になるということ」。自称「専業主婦家庭医」の守屋文香先生に、文字どおり「親になりこどもを持つこと」で出会った様々な変化、発見、学びについて話をしていただきました。
 医師をしながら子育てや家事を両立させていくことは並大抵のことではありません。仕事に没頭することが、おのずと十分でない子育ての現実から逃避していたのだということに気づいた話は非常に印象的でした。その発見の後、本来、自分はどのようにしたかったのかということに誠実に向かい合ったことが先生自身の大きな成長につながったようです。
 子育ての経験は親として、家庭医として、人として一回り大きく成長するきっかけではないでしょうか。ライフサイクルを重要視する私たち家庭医に、診療業務と同様、自分自身のライフサイクルにも目を向けながらキャリアを考えていくことの重要性を示唆する、非常に意義深い話となりました。
○ワークショップ1 「楽しい家族志向のケア」
ワークショップ1 「楽しい家族志向のケア」 その1 若手冬期セミナーのWSでは2つの必須WSがありましたが、その一つが奈義ファミリークリニックの先生方と岡山SP研究会の皆さんで行った「楽しい家族志向のケア」でした。
 始まりから田中先生率いる「奈義劇団」の巧みなWS進行に、ロールプレイに参加して楽しんでしまいました。
 ポラ○ノールを模した秀逸なスライドと「奈義劇団」による家族志向を重視した外来診療風景を見ていると、私の中にも、患者とその家族と関わりたくなる気持ちが自然と湧いてきました。いつもの外来にやってくる、最近食欲のないおじいさんや、肩こりのつよい奥さんに家族のことを改めて聞いてみたいと思いました。最後のSPさんが参加してのグループセッションでは、家族カンファレンスの中で家族の一員としての感情を体感することもできました。
ワークショップ1 「楽しい家族志向のケア」 その2 しっかりと家族志向のケアの原則も盛り込んで、ライフサイクルまで配慮して、さらに笑いを取りながら楽しく学習するスタイルは、さすが松下先生のお膝元といった感じで、拾い読みしていた「家族志向のプライマリケア」を是非とも通読して、家族と関わるというコアを大切にした家庭医を目指したいと思いました。
 田中先生やるなあ〜。
○ワークショップ2 「地域・コミュニティをケアすることをどう学ぶか」

 “地域・コミュニティをケアするということ”について、“自分が普段の診療以外で行っている活動にはどのようなものあるか? 目的は何なのか?という事前課題を基に進められました。
ワークショップ2 「地域・コミュニティをケアすることをどう学ぶか」  カレス アライアンス 北海道家庭医療学センターの山田先生が、北海道 更別にある診療所に赴任されてからの6年間、真っ白の状態から展開されてきた地域医療についてのプレゼンテーション。その中には、研修医が中心になって企画された“物忘れ外来”、ケアマネージャーと一緒に保険審査に参加する研修医の風景、地域のバスケットボール大会に参加している風景などが示されました。地域に積極的に参加し、地域のニーズを敏感に汲み取り、何でも実践してみる! というメッセージが伝わってくるものでした。ディスカッションも盛り上がり、それぞれの先生方が地域でどのような活動を展開しているのか知ることも良い刺激となり、地域・コミュニティのケアをどういう目的で、どのように展開していくのか、について考えを深めることができる、有意義なWSとなりました。
○懇親会
懇親会 特別講演、ワークショップ1日目終了後、懇親会を行いました。立食形式で、自由に歓談していただきながら、講演、ワークショップの講師の先生方を中心に、一言ずついただきました。「家庭医は夜作られる!」という言葉も、講演していただいた藤原先生からいただき、おおいに夜、未来の家庭医が作り出されたことと思います。二次会は設定不足でご迷惑をおかけしました。今後の振り返りの課題としたいと思います。不手際があったにも関わらず、その後もおおいに盛り上がり、みなさんのご協力もあり、大変、交流することができました。
2日目
○ワークショップ3 EBM 「腰痛炒めエビ風味」
ワークショップ3 EBM 「腰痛炒めエビ風味」  「腰痛炒めエビ風味」と一見風変わりなWS3は腰痛の診断をテーマにEBMを総合的に学びました。いかにおいしく作るかを追求し(臨床での疑問)、素材を集め(情報検索)、調理した結果(ワークシートの作成)、食べてみて(シートの活用)、それをレシピに残す(ワークシート)ことがこのWSの真髄です。
 私たちは普段の診療の中で診断を行うために問診、身体所見、検査など様々な手段を用いていますが、診断をつめていく上でそれらが持つ所見の意味はまさに「さまざま」です。実際にある所見についての検査前確立、検査後確立をこれまでの経験から感覚的に設定し、ノモグラムを用いて尤度比を求めました。InfoPOEMsなどの2次データベースから得られる実際の尤度比と照らし合わせると、意外に大きくずれていたり、「そこそこいい感覚」であったりとEvidenceに照らして日々の診療を振り返ることができました。Red flag signを除外しながら診断をつめたり、腰痛の患者を相手にロールプレイを行ったりと会場は実際の診療現場さながらです。練習問題や「急性腰痛アルゴリズム」まで準備されていて、まさに実践に活かせる技能が身についたWSでした!
○ワークショップ4 「家庭医こそが禁煙支援の推進者」
 今回のワークショップでは昨年4月から保険適用された禁煙の治療や支援方法を学び明日からの診療に直接役立つノウハウを身につけることができました。ワークショップ4  「家庭医こそが禁煙支援の推進者」参加者は既に禁煙外来を行っている先生から1年目研修医までさまざまでしたが、それぞれに役立つ内容が盛り込まれていました。
 屋外で喫煙しても受動喫煙のリスクになり(同居する子供の尿中のニコチン濃度2倍)、地域で1年間禁煙すると心筋梗塞の発生率が有意に低下したなど、喫煙による影響の大きさを改めて認識することができました。禁煙支援をするためには、患者の生活背景や家族関係などを理解した上で、それぞれの患者にあった治療をすすめる必要があり、家庭医の重要な役割のひとつであることがわかりました。
 禁煙マラソンなどさまざまなツールを活用して、患者だけでなくその家族も巻き込んで禁煙支援を行うとともに、自動販売機の撤去やタバコ代の値上げなど子どもがタバコを入手しにくい環境にすることや、喫煙防止教育や地域を挙げての喫煙防止の取り組みにも家庭医として積極的に関わる必要があると思いました。
○ワークショップ5 「リハビリテーション」
ワークショップ5 「リハビリテーション」  日々の外来・訪問診療に「リハビリテーション」の考え方をうまく取り入れたいと考え て,このWSを受講しました。
 「リハビリテーション」や「障害」という言葉の意味を改めて知り,ICIDH(国際障害分類)やICF(国際生活機能分類)によって患者さんの状態を評価し今後のプランをマネージメントしていくことが重要であることを学びました。グループディスカッションでは,シナリオの患者さんを自分自身に当てはめて皆で話し合うことによって,現実味をおびた有意義で楽しいWSになりました。また,時折出てきた,ドラッカー氏の言葉から日々の学習態度についても学ぶ機会を得て,大変勉強になりました。
 WSを受講しただけでは自己満足に終わってしまうので,今後学んだことを実践して日々の診療に是非役立てて行きたいと思っています。
○ワークショップ6 「生涯学習」
ワークショップ6 「生涯学習」 家庭医として地域で診療をしていくときに不安になるのは,自分の医療の質を保つために,幅広い診療分野をどうやって学び続けるかということ。このヒントをもらえたらと思って,生涯学習のワークショップに参加しました。
 家庭医の特異性,複雑性,不確実性を特徴にした仕事のなかでは,実践のなかで反省しながら育つReflective Practitionerになることが重要だということを学びました。そのReflectionを言葉に直すことを,いつも難しいと思っていたのですが,参加者同士のグループディスカッションが非常に参考になりました。また模擬カンファレンスを行うなかでの,指導医のフィードバックが診療の質,自己学習スタイルのステップアップ につながる内容になり,一学習者としても,カンファレンスを開く側としても生涯にわたって使える実践的な内容となっていました。
○おわりに
第2回冬期セミナー集合写真
 第2回冬期セミナーは1泊2日、約100名もの参加者を集め、各講演、ワークショップは充実したものとなり、前回以上に盛り上がっていました。他の参加者との交流も深めることができ、一人の参加者としても、とても充実した時間を過ごすことができました。今後もぜひこうした取り組みを続けて、若手家庭医の横のつながりを強くしていきたいと思いました。
ポストセミナー企画 「これで解決! 若手の悩み」
ポストセミナー企画 「これで解決! 若手の悩み」 セミナー日程終了後、希望者の参加でポストセミナー企画が行われました。若手家庭医が直面する悩みについて、6つのグループに分かれ、具体的に「誰が」「いつまでに」「何をする」という方策を立てることを目標にディスカッションしました。テーマには「診療の質」「生涯学習」「後期研修後の進路」「後進指導・教育」「家庭医の社会への認知・家庭医のアイデンティティ」「研究」があり、それぞれに熱い議論が交わされました。最終的に作られた方策を実行するため、現在若手家庭医部会のプロジェクト化が検討されています。

文責:日本家庭医療学会 若手家庭医部会Web担当

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