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若手家庭医のための家庭医療学冬期セミナー

第1回 若手家庭医のための家庭医療学冬期セミナー

 2006年2月11、12日、東京の晴海グランドホテルにて『若手家庭医のための家庭医療学冬期セミナー』が開催されました。若手家庭医部会主催では初めてのセミナーで、50名以上の参加者、講師が集まりました。その模様を、参加者の視点で紹介します。

[ 第1回冬期セミナー開催要項 ]

1日目
○開会前

受付風景 ホテルのロビーで受付をしているのは若手家庭医部会の生涯学習プロジェクトスタッフ。もちろん参加者と同じ医師であり、今回のセミナーの準備を進めてきてくれた方々です。参加者は自分で名札の名前を書き、2階の会場へ。会場では事前に配布された資料やしおり等に目を通しながら、開会を待っている方が多く、中には知り合いを見つけて歓談している方々も見受けられました。
○開会講演
 今回セミナーのオープンニングを飾ったのは、内山クリニック院長・内山富士雄先生による開業についての講演でした。
 普段、私たち若手家庭医は開業についての実際的な話はなかなか聞く機会がなく、参加者は興味深く聞き入っていた様子でした。開会講演オープンニングということもあり参加者はやや緊張したおもむきでしたが、内山先生のざっくばらんで時にユーモアのあるお話で楽しく講演は進んでいきました。
 内山先生からは家庭医として病院での勤務だけではなく、自己実現という観点からもぜひ開業を選択肢にいれて開業の可能性を考えてほしいというあついメッセージがありました。その中で、高齢者の関心事は“長生き”よりも“死に方”、在宅での看取り、早期発見・疾病予防・患者教育の重要性など開業してから分かったこと、開業の醍醐味をお話しされ、参加者の中に「これまで開業は全然視野に入っていなかったけれど、内山先生のお話を聞いて開業も考えるようになりました」という先生もいました。開業を考えている先生も、開業を全く考えていない先生もぜひ一度内山先生のあついメッセージをお聞きになるといいと思います。
○WS1 家庭医のネットワーク
家庭医のネットワーク 学会やセミナーだけではなく、それぞれの地域ごとに継続的なつながり・ネットワーク作りを、というテーマで開催されたのがこのワークショップです。宮崎先生・飛松先生の寸劇からスタートし、「家庭医なんて面白いのか?」と指導医に言われたり、他科の同期から遅れているように思えたり、という家庭医研修医の悩みが紹介されました。会場からは笑いもこぼれ、うなずいている方も多く見受けられました。引き続き、参加者のアンケート結果が川尻先生から紹介され、やはりネットワークが必要であると感じている方が多い、ということが分かりました。
家庭医のネットワーク そして、地域ごとに分かれたテーブルごとにKJ法を用いてネットワーク作りの目的・内容についてディスカッションが行われました。「懇親会」「飲み会」がやりたい!などという内容は多く見られましたが、勉強会・共同研究などにも話題は広がっていました。実際に動き出したグループもあり今後の発展が楽しみです。
○WS2 家族志向のケア 〜家族カンファレンスを通じて〜
家族志向のケア 〜家族カンファレンスを通じて〜
 奈義ファミリークリニック(別名:松下アクターズスクール!?)の齊藤先生、田中先生、そして岡山SP研究会の前田さんによるこのワークショップ。齊藤先生による“炎の”レクチャーは短時間でしたが内容がギュッと凝縮されており、齊藤先生の話術・熱気にもどんどん引き込まれていきました。
 その後家族志向のケア 〜家族カンファレンスを通じて〜シナリオが紹介され、参加者が医師・家族それぞれの役割を演じ家族カンファレンスのロールプレイが行われました。カンファレンスの展開は全く予測不能ですが、家族カンファレンスの難しさ、あらたな展開を生む可能性を実感することができました。最後に齊藤先生、田中先生、前田さんのデモンストレーションが行われ、参加者全員が息をのむような家族カンファレンスが持たれました。
○WS3患者中心の医療〜共通の理解基盤を気づくためのコミュニケーション技法
WS3患者中心の医療〜共通の理解基盤を気づくためのコミュニケーション技法 「共通な理解基盤を見出す」こととはどういうことなのか?どうすればできるのか??
 草場先生と北村先生の和やかで平穏な医療面接は、患者中心の医療の中で「共通の理解基盤を見出す」ことに焦点を当てたWSの中で行われました。
 高血圧を心配する女性の診察。何も意識しないで当たり前のことのように行われている面接なのに、患者さんの解釈、希望、理解などをどんどん引き出し、「薬がほしい」という患者さんに「うーん・・・、確かに患者さんの考えや思いもわかるので、薬を出しますので1週間後に必ず来てくださいね」と双方が納得の上で診察を終了した講師の先生の技術に私は驚いた。
 自分の診療を振り返ると「高血圧に薬は最初は必要ないですよ。食事と運動を頑張ってくださいね。」で納得しないまま帰った人も少なからずいたような気がする。これが家庭医のスキルなのか!
WS3患者中心の医療〜共通の理解基盤を気づくためのコミュニケーション技法 この講義の内容を勉強すれば、こんな風になれるのか・・・と思い、その後の講義を熱心に勉強し頭に入れた。「よし、頭に入れた!大丈夫!」そんな思いを持って最後のロールプレイで糖尿病の患者さんに実践してみた。
・・・やはり理論と実践はすぐにはリンクしないようだ。
糖尿病の患者さんは手ごわく、私の持っている交渉の手段ではあっけなく全滅してしまった。
 一朝一夕には身に付かない、でも身に付ければ臨床能力が格段にアップし、患者さんの満足度もあがる「共通基盤の理解を見出す」ことに今後取り組んでみようと思った。
○懇親会
懇親会
 ワークショップの終了後、内山先生の乾杯の音頭で懇親会が始まりました。立食形式と言うこともあり、参加者同士そして指導医の先生方との話もはずみ、日頃の悩みの解消・共有はもちろん、新たなつながりを作れた参加者も多かったようです。後半にはビール瓶をバトン代わりにして、参加者全員の自己紹介も行われました。それぞれのお国自慢などもあり楽しい時間を過ごしていました。1次会終了後も2次会、そして各自の部屋でと夜遅くまで続いていたようです。
2日目
○WS4 clinical jazz〜臨床での振り返り〜
WS4 clinical jazz〜臨床での振り返り〜 森先生率いる出雲家庭医療センターのメンバーによるディスカッションをメインとしたWSで、「時間が足りない!」という悲鳴が出るほど白熱したディスカッションになりました。
 最初に講義形式で、我々が常に成長する専門家になるために必要な、臨床問題を反省し、そこで得た学びを意識的に自分の臨床に生かしていく「反省的実践家(Reflective Practitioner)」の考えと、そのためのツールとしてSEA(Significant Event Analysis)を学び、それからSEAの実践をディスカッション形式で行いました。
 日常臨床の問題が多かったですが、医療過誤に関わる話題を取り上げたグループもあり、これぞ「Significant Event」という印象をうけました。
 各自の思いが詰まった「Event」を全員で分析、共有し、考えることができたのは非常に有意義でした。
 実際の現場では、現在直面した問題に対処することはあっても、過去の問題に対して振り返りをすることは日常の忙しさの中でなかなか実践できていない部分だと思います。自分、チームの成長のためにぜひ今後実践していきたいと思いました。
○WS5 家庭医らしい外来診療とは?
家庭医らしい外来診療とは? 予防医学を主に、外来診療における「攻めるプライマリケア」を学びました。「攻める!」という気合の入った伊藤先生、大橋先生、喜瀬先生、田口先生、西岡先生、宮崎先生、山下先生と多彩な講師陣に岡田先生が加わり、パワーあふれるセッションとなりました。
 最初に中年女性が受診した際の予防医学的なチェックについて、「スクリーニング検査」「予防接種」「投薬」「カウンセリング」に分けて話し合いましたが、学生と比べて検査は多いがカウンセリングの量が少ないと指摘がありました。検査重視の日常に少し反省です・・・。
 その後、実際に予防医学の実践面接を行いました。いつもは行っていないカルシウムの予防内服についてお勧めしてみましたが、うまく断られてへこたれました・・・。
 しかし健康な人や、他の主訴で来た患者さんに予防医学の観点からかかわりを持っていくことは、他の専門医にはない家庭医療ならではの専門領域で、非常に家庭医らしい実践的なセッションだと感じました。
 風邪で受診した患者さんに「血圧は?」「体重は?」「肺炎の予防接種しましたか?」などと主訴以外の部分に関わっていくことには最初は遠慮があるのですが、「家庭医はおせっかいな医者でいいのでは?」という言葉を励みに「攻める」気持ちで関わっていこうと思います!
○閉会挨拶
閉会挨拶 今回セミナーの締めくくりを飾ったのは、かとうファミリークリニック院長・加藤貴紀先生でした。加藤先生はまだお若いですが、開業されるまでの苦労や研修のこと、開業されてからの楽しさや今後のことなど実際の話を交えて楽しくお話しして下さいました。
 お話が終わった後も参加者から数多くの質問があり、関心の高さがうかがえました。きっと若手の家庭医にとっては身近な将来のロールモデルとして感じたのではないかと思います。 私自身も是非見学に行こうと改めて感じました。

(若手家庭医部会Webプロジェクト取材班)

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